イラクの総選挙が3月7日に実施され、このほど結果が発表された。
連邦議会の定数325のうち、アラウィ元首相派の政党連合「イラキーヤ」が91議席を獲得して第1党となり、続いてマリキ首相派の「法治国家連合」が89議席で小差の2位につけた。

イラキーヤは宗教色の薄い世俗派政党連合で、法治国家連合も宗派横断型会派である。 特定の宗派色が濃い政党は伸び悩んだ。
「宗派対立はもうごめんだ」というのが、選挙で示されたイラク国民の民意だといえる。

イラクでは長年、民族や宗教・宗派の違いによる対立が続いてきた。 イスラム教シーア派のアラブ人が全人口の約6割を占め、約2割がスンニ派のアラブ人、さらに約2割がクルド人だ。
クルド人は主にスンニ派で、北部に自治区を持つ。

イラク戦争終結後、2006年2月にシーア派聖廟(せいびょう)爆破事件が起きてからは、シーア派とスンニ派の対立が激化し、07年にかけて事実上の内戦状態に陥った。
最悪期には1カ月に3千人を超す民間人の死者が出たという。

しかし、イラク政府による自前の治安部隊が育つにつれ、治安は大きく回復した。
今回選挙ではアルカイダ系組織がテロによる妨害を警告したが、前回総選挙(05年12月)をボイコットしたスンニ派も選挙に参加し、投票率は62%に上った。
民主主義を根付かせ、戦争と内紛で荒廃した国家を再建しようというイラク国民の思いを反映したといえる。

宗派や民族間抗争の火種を残さない連立協議を早期にまとめ、治安の空白をつくらないことが大事だ。
「国民的政府」を早く樹立し、暴力でなく政治が支配する国へ、確実に歩みを進めてほしい。